「資産除去債務って何?聞いたことはあるけど、、」
「資産は現金とかだよね?」、「除去はなくすこと?」、「債務は支払うお金?」
「3つの言葉がつながらないんだけど、、」
となりますよね。
資産除去債務とは何か、資産除去債務を計上する必要性を説明します。
この記事を読んでもらえたら、資産除去債務という言葉を敬遠することは少なくなります。
ですので、最後まで読んでみてくださいね。
資産除去債務って何?
資産除去債務とは、有形固定資産(建物、構築物)を除却(廃棄、取り壊しなど)するときに経費がかかることが分かっている場合は、その資産を購入した時点で、処理するときにかかる費用も計上するものです。
つまり、資産除去債務は、資産を除去するときにかかる経費を事前に計上している負債です。
資産除去債務って必要あるの?
資産除去債務を計上しないと、除却(廃棄、取り壊し)時にすべての経費を計上することになります。
つまり、費用を先送りすることなります。
会計では費用を先送りすることは、利益を過大計上につながるため、NGです。
このことについては、別の記事で詳しく説明します。
正確に負債(将来に支払う必要があるお金)を認識し、正確な利益計算する必要があるため、資産除去債務が必要となります。
資産除去債務を計上する例は?
資産除去債務を計上する必要がある、主な例は2つあります。
- 土地を借りている場合
- 有害物質が含まれている場合
土地を借りている場合
土地を借りている場合では、資産除去債務を計上するケースが多いです。
土地を借りて店舗を建てると、土地を返却する時に店舗を取り壊す必要があります。
つまり、土地を返却する時には、建物を取り壊すための経費が発生します。
そのため、土地を借りて建物を建てた場合は、資産除去債務を計上する必要があります。
ただし、借りた土地に建物が存在しており、その建物を利用する場合は、土地を返却するときに取り壊す必要がないので、資産除去債務を計上する必要がありません。
有害物質が含まれている場合
建物に使用されている建材などに有害物質が含まれている場合は、資産除去債務を計上する必要があります。
有害物質の例は、アスベストです。
アスベストは建材に使われていた物質でしたが、健康被害があるため、現在では法律で使用を禁止されています。
建物を取り壊しする際にはアスベストを除去することが義務づけられています。アスベストを使用している場合、資産除去債務を計上する必要があります。
資産除去債務の計算方法は?
資産除去債務は固定資産などが発生したときに、有形固定資産の除去に必要な割引前の将来キャッシュ・フローを見積り、割引後の金額で算定するものです。
(企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」6)に定義の記載があります。
https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/aro-1.pdf
(企業会計審議会サイトより引用)
文章だけだと、なかなかイメージが湧きにくいと思いますので、具体例を用いて、説明します。
前提条件
Y社は、20X1 年 4 月 1 日に設備Aを取得し、使用を開始した。当該設備の取得原価は6,000万円(以下、単位省略)、耐用年数は 3年であり、Y社には当該設備を使用後に除去する法的義務がある。
Y社が当該設備を除去するときの支出は500と見積られている。
20X4 年3月31日に設備Aが除去された。当該設備の除去に係る支出は550であった。
資産除去債務は取得時にのみ発生するものとし、Y社は当該設備について残存価額0で定額法により減価償却を行っている。割引率は3.0%とする。Y社の決算日は3月31日であるものとする。
20X1年4月1日における仕訳
設備Aの購入時における20X1年4月1日における仕訳は次のようになります。
資産除去債務は資産、負債で両建てになります。(資産は固定資産科目として計上します。)
*将来キャッシュ・フロー見積額500/(1.03)³=458
20X2年3月31日における仕訳
1年経過時点の20X2年3月31日における仕訳は次のようになります。
一つ目の仕訳は、時の経過による資産除去債務の増加の仕訳です。
二つ目の仕訳は、減価償却費を計上する仕訳です。
*20X1 年 4 月1日における資産除去債務458×3.0%=14
*設備Aの減価償却費6,000/3年+除去費用資産計上額458/3年=2,153
20X3年3月31日における仕訳
2年経過時点の20X3年3月31日における仕訳は次のようになります。
一つ目の仕訳は、時の経過による資産除去債務の増加の仕訳です。
二つ目の仕訳は、減価償却費を計上する仕訳です。
*20X2 年 3月31日における資産除去債務(458+14)×3.0%=14
時の経過による利息費用は複利で増加するため、上記の計算方法になります。
*設備Aの減価償却費6,000/3年+除去費用資産計上額458/3年=2,153
20X4年3月31日における仕訳
除却時点の20X4年3月31日における仕訳は次のようになります。
一つ目の仕訳は、時の経過による資産除去債務の増加の仕訳です。
二つ目の仕訳は、減価償却費を計上する仕訳です。
三つ目の仕訳は、設備Aを除却する仕訳です。
*20X3 年 3 月31日における資産除去債務(458+14+14)×3.0%=14
時の経過による利息費用は複利で増加するため、上記の計算方法になります。
(当初の見積額500-(458+14+14)=14とも算出することができます。)
*設備A6,000+除去費用資産計上額458-残存価額0-過去の減価償却費2,153×2年=2,152
*20X4 年 3 月31日における資産除去債務458+14+14+14=500
まとめ
今回は、資産除去債務とは何か、その必要性、計上する例、会計処理について説明しました。
資産除去債務は、頻出の論点となりますので、その際に有用となるようにまとめさせていただきました。
資産除去債務は、固定資産を除去する際にかかる費用を見積り、割引計算し、資産と負債を両建てする必要があります。
それぞれ、振替する(残高を減らす)タイミングが異なります。
資産は固定資産の減価償却と一緒に費用化します。
負債は実際に除去するタイミングで振替処理を実施します。
今回は、当初の見積りを変更しない場合を例に取り上げました。
次回以降に、見積りの変更があった場合の具体例を取り上げます。
ブログをご覧いただきありがとうございました。
資産除去債務以外の会計処理のブログも上げていますので、そちらもご覧いただけると嬉しいです。
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